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続・Wuppertal留学日記

2016年10月から2017年3月頃まで、再度留学する機会に恵まれました。前回に引き続き、大学の様子や体験などを書き残していこうと思います。

(2016年10月17日(月):曇り) 大学の新入生向けイベント ~ Jさん宅へ

生活事情

今日は8時30分頃起床、9時5分前くらいに家を出ました。

9時からUni-Halleという大学の体育館のようなところで、新入生向けの歓迎イベントが予定されていたのです。
到着したのは9時5分頃だったと思いますがまだイベントは始まっていませんでした。
ただ、既に席はほぼ満席でしたので立ち見をすることにしました。

イベントはいわゆる入学式あるいは始業式のようなもので、大学に関する紹介をはじめとしてWuppertalの市長さんの挨拶などが行われました。
特に真新しい発見などはなかったように思います。
大事なのはその後で、無料で大学関連の資料に加えて結構立派なショルダーバックが学生全員に配布されました。
前回はエコバックのような手提げ袋に資料を入れた形で配布していたので、Wuppertal大学も資金的に潤ってきているのかもしれません。

帰り道ではサークル勧誘ならぬ、各学問分野のtutorさんによる学生への声掛けがなされていました。
人であふれかえっていてカオスな状況でしたが、何とか「Geschichte」のプラカードを掲げた一団を見つけることができたので、そこで歴史系コースのパンフレットを頂きました。
それによると、今週一週間は履修登録期間のようなものであり、個別相談の時間も用意してくださっているとのことです。
今日は奨学金関連の書類をもらうために先生にアポを取っていたので直ぐにそちらに向かわねばならなかったのですが、まだ彼らと話すチャンスはありそうです。

私はこれまでの研究やこれからの研究計画について日本語で書いたものしか持ち合わせていなかったので、とりあえず英語でもいいから簡単に自分の研究に関するレジュメを作ってみようと思います。
それを持って履修相談に行ってみて、受けることができる授業あるいはゼミのようなものがあれば顔を出させていただきたいところです。
当然、ドイツ語力の問題はあるのですが、こちらの学生がどういう風に各々の学習・研究を進めているのかという様子だけでもわかれば得るものはありそうです。
また、似たような分野に興味を持っている学生と出会うことができれば今後の活動をしやすくなるようにも思います。

ともあれ、今日の午前中は上述の会と情報収集で終わってしまいました。

お昼前に奨学金書類も準備をすることができたので、さっそくスキャンして国際交流課に送り、午後はノルマの読書を進めました。
途中で喫煙のために外の灰皿まで出かけたところ、また小さな出会いがありました。
灰皿付近に立ち尽くしている青年がいたので声をかけてみたのですが、待ち合わせをしていたそうです。
しばらく話をしていたのですが、彼はSicherheit Technik(安全技術?安全工学?)なるものを勉強しているのだそうです。
「それは車か何かの?」と尋ねたところ「火災時とかそういうときに役立つ技術」なのだと教えてくれました。
彼は以前、兵役の代替としての社会奉仕活動の一環で消防署で働いていたそうで、その時の経験もあって今の分野にいるのだそうです。

兵役と聞くとあまりいいイメージはないかもしれませんが、代替活動としてインターンシップ的な活動が活性化されるという点では有用なシステムかもしれませんね。

 

17時前になって買い物に出かけ、スーパーで生活資材、ホームセンターで椅子のクッションをそれぞれ購入。
今部屋にある椅子は固くて本を読んだりパソコンで作業をしたりと何かと座っていることが多い生活にはきつかったので、これでQOLの向上が期待できます。

 

帰り際に、Jさんからメッセージが入っており、「うちの子と遊びに来ない?」とのお誘いを受けました。
「是非」と答えたところ、住所が送られてくるというこの感じ...懐かしい...。
買い物で普段より遠くに出歩いていたため、若干時間が遅くなってしまい20時頃彼の家を訪ねました。
子供はまだ起きているだろうか。

家に入ると早速2歳の少年が走り寄ってきて何か言っています。
まだ言葉を話せないということだったのですが、独自の言語で必死に語りかけてくるのでこちらもそれっぽく返事をしておきました。
私のイメージですと、2歳児はまだまだ泣いてばかりいるものだと思っていたのですが、全くそんなことはありませんでした。
元気いっぱいであちこち走り回って、色々なものに興味を持って触ったり投げたりしていたかと思えば、あっという間に興味を失って...といった具合にもう忙しいことといったらありません。
こちらもそれに合わせて色々遊びに付き合っていたのですが、体力が持ちませんでした。
それに、急に暴力的になったりもするのでうまく付き合うことができません。とはいえ、先方は始終ニコニコしていてゴキゲンでした。

ドイツの子育て事情は中々大変なのだそうで、特に保育園は今や入ることが困難な状況にあるのだそうです。
というのも、シリアなどから大量の難民がドイツにやってきている中で、子供連れの難民家族のために保育園のキャパシティが割かれてしまっているらしく、余裕のある保育園を探すだけでも根気がいる作業になるようなのです。保育園問題というとどこかで聞いたような話ですね。さすがに「保育園落ちた。ドイツ死ね。」などとは言っていませんでしたが、一日中子供の面倒を見なければならない状況は親の生活の制約条件になってしまってつらそうでした。
また、ドイツには母親たちが子供を連れて集まって、友達づくりをしたりお互いに情報交換をして助け合うような施設があるらしいのですが、そこに通うのも大変なようでした。
やはり子育てというのはどこの国でも大変なものなのでしょうね。
話を聞いている側としては興味深いのですが、当事者からしたらたまったものではないでしょう。


20時過ぎに訪れたはずなのですが、あっという間に23時前になっているではありませんか。
なんだかんだで自分も楽しんでいたようです。
ところで、「子供は早く寝るもの」というステレオタイプがあったのですが、彼は疲れを見せるどころか異常なまでのハイテンションをキープしています。
Jさんたちに話を聞くと、おおよそ毎日こんな感じで、寝かしつけるのに苦労するそうです。そりゃあそうだろうなぁと3時間しか付き合っていない私にも骨身に染みて感じられました。

寝かせようとすると急に機嫌を崩して泣き出してしまいました。何か寝かせる作戦はあるの?と聞いてみたのですが、徐々にテレビなどを消していって電気を消すところまで持って行くだけでも尋常ではない苦労があるらしく、半ばお手上げ状態のようでした。私もプロレスもどきの相手を小一時間していたのですが、まったく眠そうな様子を見せてくれません。

2歳児は20歳児よりはるかに元気で熱心に生きています。人や物に対する好奇心の示し方にも一切の躊躇がないため、見ている側としては微笑ましくも危なっかしくもありソワソワさせられます。
とはいえ、その感受性には感動させられます。本当にちょっとしたことに対して思いっきり笑ったり、悔しそうにしたりしている姿を見ていると人生は素晴らしいものなのではないかなどと錯覚させられそうになります。
一週間に一回、2~3時間子供の遊び相手をするということであれば楽しく過ごせそうですが、これがもし毎日四六時中となったらノイローゼで自殺してしまいそうです。
親の苦労は私には及びもつきませんし、経験してみたいとも中々思えないところではありますが、こうして他人の子と遊ぶだけであれば無責任かつ気楽なものです。
子育て頑張ってくれ、Jさん。

前回留学時にも7歳児の少年と9歳の少女の相手をする機会があったのですが、その時にも色々と衝撃を受けました。
おおむね上述のものと類似した感想を前回ブログに書いたような気がしますが、子供たちの感性の鋭さに対してはある種の敗北感さえ覚えます。
当時、7歳の少年は「見て見て!いいもの見つけた」と目をキラキラさせながら私に花火の燃えカスを見せに来たのです。
もうこの時の敗北感といったらありませんでしたよ。何しろ私は花火の燃えカスなんて見向きもしていなかったばかりか、見せられたところで感想の一つも浮かびませんでした。

全力で自身の周りにあるものに対して興味を示し、それによって大喜びしたり大泣きしたりするなんて素敵だとは思いませんか。
とはいえ、大人が花火の燃えカスに目を輝かせていたとしたら、それはもはや狂気の人かもしれませんが...。

ここ1~2年の間、心から熱中できる物・人・事に出会うことができていません。
ただ、実際は出会うことができていないというよりも、おそらく私の感性が鈍くなっていて目の前にある素敵な物事に気付いていないのだろうと思います。
どことなく寂しいというか心が寒いというか、物足りないような感情に苛まれていました。
大学院に入ってから同期もいなくなってしまいましたし、研究もここ数カ月行き詰ってしまっていたため、いよいよもって寄る辺ないような気分だったのです。

これは留学のせいなのではないかなどと考えていたこともありました。
留学で異文化にじっくり触れて慣れていったために、改めて日本に帰ってきてから日本文化に再度馴染むのに苦労する...という話はままあるようで、留学ガイダンス時にも「留学のW字型曲線」などという言葉で説明されたように記憶しています。
当時の説明によると「留学当初は新鮮さに気持ちが高まるが、徐々に現地文化とのずれに苦しみ始める。時間がたつとそのギャップを埋めることができ、改めて楽しく生活できるようになる。」というのが「留学のV字曲線」と呼ばれているそうです。要するに、気分というか感情がV字型に上下するということですね。
これに帰国後の話を足して「日本に帰ってくると久しぶりの日本文化に触れてハイになる。ところが、しばらくするとどこか今までの留学生活と日本の生活の間のギャップを感じて孤独感・疎外感を感じる。さらに時間が経つことで日本の生活に再順応していく。」という形でもう一つのV字型を形成するというわけです。

既にこのブログでも書いたように、ドイツの人たちは気さくでフレンドリーで社交的です。初対面であっても、あるいは偶然バスや電車に乗り合わせてだけの相手であっても親しみをもって会話をする文化があります。このスタイルに慣れてしまうと、帰国後日本で業務マニュアル的な親切な応対をされたり社交辞令の嵐に見舞われたりした際に居心地の悪さを覚えます。それが長引いているのかななんて思っていましたが、ドイツに改めて来てみて、改めて居心地の良さを覚えるかというとそうでもありません。
当然、楽しいことや新鮮なことはあるのですが、ここがホームだという気持ちにはならないのです。やはり自分はよそ者で、ここにいさせていただいている身なのだという思いです。今はマージナルな状態なのでしょうか。

...いや、これは感性が死につつあるからに違いない。
2歳児を見ていて、そんなことを考えさせられました。
ここは一度初心に戻り、自分の周囲のものに対する興味を新たにしていきたいと思います。
この半年で、前回の一年に負けないくらいの物事を吸収できるよう頑張ります。
当然、研究に関しても同様に、です。