続・Wuppertal留学日記

2016年10月から2017年3月頃まで、再度留学する機会に恵まれました。前回に引き続き、大学の様子や体験などを書き残していこうと思います。

目的

今回は留学の目的のお話しです。今年の話をする前に、まずは前回留学時を振り返ってみたいと思います。

当時は以下の3つの目的を定めていました。

  1. 生活力の向上、自立
  2. 経験値を増やす
  3. 日本との意識の差を学ぶ(特にかつての戦争に対する考え方)

私は大学院生になった今でも実家暮らしの自宅生なのですが、前回の留学時に初めて一人暮らしを経験しました。そんなわけで不安だらけだったわけですが、いざ一人になってみれば何とかなるもので、目的1についてはそれなりに達成できたといえると思います。ただ、結局実家に帰ってきてからはダラダラしてしまっていますので、根本的に何かが変わったわけではありません。

目的2についても達成できたといえると思います。大学での授業だけでなく、あちこち旅行して興味のあるものを見てきたり、話を聞いてきたりすることができ、さまざまな経験ができました。

危機対処能力が上がったかどうかは分かりませんが、色々な人と話しているうちに自分の考え方も変わってきて、物事を寛容に受け入れられるようになってきたような気がします。なんというか、気持ちに余裕ができたというような感じでしょうか。まぁ色々あるよね、といった具合に大概のことは受け流せるようになりました。性格が適当になっただけかもしれませんが...。

それから、前回の留学体験のおかげで人と話すことに対するハードルが下がりました。留学中に出会ったドイツの人たちは気さくに声をかけてくれるタイプの人が多かったので、彼らから色々学ぶことができたように思います。

今では、何か困ったらその辺の人に聞けばいいやという精神で気楽にやっています。これも一つの危機対処能力?でしょうか。

目的3ですが、これについては何ともいえません。あちこちの博物館や史跡をめぐっているうちに、なんとなく理解できた部分もあれば、その一方で謎が深まった部分もあるからです。その最たるものがキールの海軍記念碑の存在でした。これを卒業研究のテーマにして、現在も研究対象として扱うことになったという点においては、目的3は現在も探求中といえるかもしれません。

 

と、いった感じで前回目指していたこととそれに対するフィードバックをしてみました。続いて、今回のお話に移りたいと思います。

 

今回の目的は以下の二つです。

  1. 研究材料の収集
  2. 自分の感覚の確認

「1.研究材料の収集」についてですが、これについては以前もちらっと紹介しました。私の研究対象はキールの海軍記念碑です。ただ、これについては日本には先行研究がほとんどありません。卒業研究では、前回施設を訪れた際に購入した施設のブックレットと、施設を運営する団体のwebページを一次資料的に扱ったのですが、修士過程に入ってからは良い材料を見つけられずにいました。

記念碑をめぐる論争を調べてみたり、ドイツにおける戦争記憶関連の言説を押さえたりと外堀を埋めるようなアプローチで半年ほど勉強していたのですが、それ以降は行き詰ってしまっていました。今年の春に一度発表の機会があり、その際には自分の中で研究の道筋がある程度見えていた気がするのですが、今年の5月ごろからよく分からなくなってきてしまい、自分のテーマを半ば投げ出してしまっていました。単なる5月病だったのかもしれませんが、これが結構後を引いてしまって、夏ごろまで無気力に過ごしてしまっていました。度し難い話です。

最近になって、日独海軍交流史のような視点を打ち出してみたりしましたが、「今の時点では何とでも言えてしまうから、改めて現地で資料にあたるか、人に話を聞いたりしてきた方が良い」という指導教員からのアドバイスのもと、再度ドイツに来たわけです。

具体的には、以下のようなアプローチを考えています。

  • ドイツ史、海軍史(キール史)の文献調査
  • 記念碑にまつわる運動史などの調査(碑に対する反対運動があったといわれている)
  • 現地を再訪問し話を聞く
  • 海軍だけでなく、陸・空軍の記念碑も訪れてみる
  • 連邦軍の兵士追悼の在り方を調べる(ドレスデン連邦軍博物館に行ってみる)

ドイツにおける先行研究を抑えることすら満足にできていないわけですので、まずはそこからでしょうか。とにかく、現在の行き詰まりを打破するためにも関連分野にアンテナを張って、修論の道筋を確定できるように積極的に活動したいと思います。

 

「2.自分の感覚の確認」についてですが、こちらはいわゆる自分探し的なものです。前回のドイツ留学は自分にとっては感動の連続で、ドイツの風土や人の雰囲気などが本当に好きになりました。ドイツで働きたいとかドイツに骨を埋めたいとか、そんなことさえ思っていたくらいです。

ただ、私は上で述べたように実家暮らしの身ですので、見知らぬ街に住むという経験がそれまでありませんでした。もしかすると、単に「実家から出た新鮮さ」をドイツの良さと勘違いしていただけなのでは?と帰国してから思うことがありました。大学入学時に初めて一人暮らしを経験する若者が感じるような”急に自立したかのような錯覚”や”完全に自由になったような気分”が気持ちよかっただけなのかもしれません。だとしたら、親のスネをかじっている身で恩知らずな話です。

そんなわけで、もう一度ドイツを訪れたら自分がどう思うのかということに興味が出てきました。特に、同じ町に留学するわけですから、今回はさして新鮮さはないはずです。さらに最近は移民問題との関連で排外主義も広がりつつあるといいますし、実は居心地の良いドイツなどすでにどこかに消え去っているかもしれないのです。

それであってもドイツの風土や人柄に対する好意は揺らがないのか、それとももはや何とも思わなくなっているのかということを確認してみたいのです。

もし今回の留学でもなおドイツに対する関心が薄れなかったならば、今後を考える上での一つの材料にするつもりです。

本当に贅沢な生き方をしているなぁと我ながら思いますが、交換留学の枠が余っていて奨学金ももらえるというのだから、このチャンスを存分に利用させてもらいます。こんなチャンスがホイホイ転がっているのは田舎の大学だからでしょうか。「せっかく留学枠があるんだからもっと皆活用すればいいのに!」と思う反面、定員割れ状態であったことをありがたく思っている部分もあります。いやはや。