続・Wuppertal留学日記

2016年10月から2017年3月頃まで、再度留学する機会に恵まれました。前回に引き続き、大学の様子や体験などを書き残していこうと思います。

2016年12月10日(土):晴れ 初Stuttgart

今日は朝4時ごろから活動開始し、5時に友人と待ち合わせてデュッセルドルフへ向かいました。そこからもはやおなじみのFlixbusでStuttgartへ向かいます。

昨晩は隣人宅のご近所さん集合パーティのおかげでほぼ眠れませんでした。解散は2時前くらいだったのですが、変なゲームのせいで酔いが回って気持ち悪くなってしまいました。久々にここまで気持ち悪くなりました。いやはや。

今回は余裕をもってデュッセルドルフに到着し、無事バスに乗り込むことができました。ここから目的地のStuttgart-Nordまではおよそ8時間の道のりです。寝ていればすぐなのでしょうが、やや気が重くなります。Flixbusはお値段もお手頃で電車よりも到着時間を柔軟に選択できるところが強みなのですが、体力の消耗が激しいのが難点です。

昨晩眠れなかったこともあってほぼ全道中夢の中だったのですが14時頃目的地で目が覚めてもなお頭が重く、体がだるいという残念なコンディションでした。交通費を浮かせるために体力を削ったという点では等価交換といえなくはないのですが、今後の交通手段はちょっと考えた方がいいかもしれません。

Stuttgard-NordからS-BahnでSchwabstrasseという駅に移動し、そこでこちらの友人のYさんと会うことになっていました。駅でYさんとその交際相手と合流し、一緒に家まで連れて行ってもらいました。

Yさんとは若干ややこしい関係です。私のいとこがバンク―バーに留学していた際に知り合ったのですが、その後日本に興味をもって何度か日本のいとこ邸に遊びに来ていました。ちょうどそれが私のドイツ留学の後のタイミングだったため、「ドイツ人が遊びにくるからおいでよ。ドイツ語の練習もできるかもよ。」といとこからお誘いをいただき、そこで知り合ったのです。そういった次第ですので、ドイツで会うのはこれが初めてでした。

ただ、既にYさんは日本に何度か来たこともあり、また奇特なことに日本語の勉強をしていることもあって少し日本語を話せるのです。駅で会ってからずっと日本語で話していたので、なんだか奇妙な気分を味わいました。ただ、Yさんが日本に来た際にドイツ語で話しをしていた時にはYさんの方が「日本でドイツ語を話すのは変な気分だ」と言っていたので、これはある種の意趣返しなのかもしれません。

何より驚いたのは、Yさんの交際相手が日本語ペラペラだったことです。ブルガリア出身らしいのですが、父親が日本に留学したり働いたりしていたことがあった影響で、幼少期を日本で過ごしていたのだそうです。「もう子供のころのことだから日本語はほとんど忘れてしまった」などと言っていたのですが、下手な日本人よりよほどしっかりした言葉を話していたため驚かされました。

ブルガリアのことはよく知らなかったのですが、社会主義時代の話をあれこれ聞かせてくれました。

Yさん宅に荷物を置かせていただいたのち、Stuttgartの町を一望できるテレビ塔に連れて行ってもらいました。Yさんおお父さんがSWR(Südwestrundfunk:Stuttgard近辺のテレビネットワーク)で働いているそうで、それとなくゆかりのある地なのだそうです。

テレビ塔まではZahnradbahn(歯車電車)という乗り物で移動しました。名前の通り、車輪の代わりに歯車が車体下部に備え付けられており、地面に掘られた溝に歯車を嚙合わせることで傾斜を登るという仕組みなのだそうです。日本だとこういう場合はケーブルカーが使われているように思いますが、ドイツ人的発想によってそんなものが生まれたのでしょうか。それとも私が知らないだけで実はあちこちに存在するのでしょうか。

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▲歯車とかみ合うための専用レール

テレビ塔からは町を全周囲にわたって見渡すことができました。
私の勝手なイメージではStuttgardは都会だということになっていたのですが、森林地帯も多く、また街並みも古風で面白いところです。Yさんの交際相手情報ですが、Stuttgardは大戦中ほとんど空襲を受けなかったのだそうです。連合国の爆撃機の航続距離外に位置していたことが原因だというようなことを言っていたと思いますが、とにかく大戦で古い建物が失われるということがなかったために古い町並みが今も残っているということらしいです。

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▲テレビ塔からの街並み

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▲Stuttgartの日の入り

 

大戦中はイギリスから連合国の爆撃機が飛来していたはずですので、南ドイツの方が被害が少なかったようです。そういう発想でドイツの街並みについて考えたことはありませんでしたので、新しい発見でした。

テレビ塔で日の入りを眺めたのちは、クリスマスマーケットに連れて行ってもらいました。
Stuttgartは大きな町ですので、クリスマスマーケットもあちこちで開かれています。

Nordrhein-Westfalenでは見かけないような食べ物があったのが新鮮でした。Zwiebelfleischという肉の塊と玉ねぎをパンにはさんだものがおいしかったです。ただ、これは別にこの土地の名産というわけではないのかもしれません。

Esslingenという地域ではMittelalter-Weihnachtsmarkt(中世風クリスマスマーケット)が行われていました。Wuppertalにもほんの小さなものがあるのですが、ここは町一つが中世風のお店で覆われていて独特な雰囲気を醸し出しています。

中にはマントなどの古風な服装をした人たちもおり、人の様子を見ているだけでも異様なものがあります。Glühweinのカップも土器のような不思議な造形で、気分が出ています。今回はホットはちみつ酒を飲んでみました。ホットワイン、ホットビール、ホットはちみつ酒といった具合に、クリスマスマーケットでは各種アルコールが温めて提供されています。厳しい寒さの中、屋外で行われている行事ですので納得の品ぞろえではありますが、未だに新鮮さがあります。

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▲クリスマスマーケットの様子

結局バスから降りてからずっと体がだるく、Yさん宅に帰ってからはすぐに眠ることができました。
充実した一日でした。

 

2016年12月9日(金):曇り 隣人宅パーティ再び

今日は授業終了後は家でずっと作業をしていました。夕方になってから夕食と買い物を済ませ、21時からの友人宅のパーティに備えていました。ただ、明日からの旅行の準備もあってややバタバタしており、気付いたら23時くらいになってしまっていました。

もういっそこのまま家にいようかなと思ったりもしたのですが、隣人から「来ないの?」とメッセージが来ていたため、少しだけ顔を出すことにしました。ビールやお菓子も買ってあったので、それをもってお邪魔してみたところ、前回以上に多くの人が溜まっていました。

「これからTrinkspielをやるからまだあまりアルコ―ルは飲まない方がいい」とよく分からない助言をされ、様子をうかがっているとそのゲームが始まりました。

スマートフォンのアプリで行うパーティゲームのようなものだったのですが、いろいろなお題や指令が出されて、それに沿ってお酒を飲んでいくという恐ろしいゲームでした。
例えば「白い靴下をはいている人は3口飲め!」とか、「Aさんは今からダンスクイーン!この人の動きをみんなで真似して、一番動きが遅かった人はコップ一杯飲め!」といった具合に毎ターン何らかの条件が示されていくのです。

ゲームの内容もさることながら、同じフロアに住んでいるご近所さんが集まってこういう風にワイワイ遊んでいるというこの状況が私にとっては異文化体験でした。これが本当の隣人愛か、などと一人感心していたのですが、こちらの人たちからするとこういう距離感の人間関係は極めて普通なようで皆楽しくやっています。

私は日本で一人暮らしをしたことがありません。そのため、日本における寮やアパートの文化を知りません。嘘か真か、「隣人がうるさく騒いでいたら壁を殴りつけて遺憾の意を表明する」などという話を聞いたことがあるため、日本の一人暮らしは殺伐としているのだというのが私のイメージです。それがここではどうでしょうか。隣人がうるさいなどという次元はあっさり乗り越えており、隣人を呼び集めてうるさくするという日本的発想の斜め上をいっています。
正直なところ戸惑う部分もあるのですが、こういうGemeinschaftっぽい感じは結構好きです。こういう人付き合いのスキルを学んで帰りたいと思う反面、そんなことを日本でやったら一日で村八分になってしまうような気もします。

こういう場にいると、新鮮な経験ができることに対する喜びを覚えますが、同時に自分はどこまで行っても日本人だなぁということを痛感します。私はドイツの人の雰囲気や、ここでの生活が好きですが、ドイツ人にはなれないしドイツに永住することもできないような気がします。
たかだか25歳の青二才ではありますが、私には既に日本式の思考や行動様式が染みついています。これを完全に取り払うことは相当難しいでしょう。かといって、ドイツにいるからといって非日本化されていなければいけないということもありません。日本人としてこういう文化にどう向き合うのか、またどのようにそこに馴染んでいくのかというのが"外国人"としての課題なのだと思います。私にはこの課題をクリアすることができる気がしません。私はやはり島国出身のシャイなアジア人です。以前より多少は人付き合いに対する垣根が下がってきた気がしますが、それでもどうしても違和感や場違いな気分に陥ってしまいます。

コミュニケーション力に関しては日本人は欧州人に叶わないような気がします。彼らは言語能力だけでなく、人との距離の取り方が異様に上手なのです。これはどういう文化に起因するものなのかわかりませんが、おそらく地続きに多くの国が接していることから他国人と接する機会も多く、そのためにお互いを分かりあおうとする意志が強いのではないかと邪推しています。さらに、異質な文化や人々と接する機会もおそらく日本人よりは多いのでしょう。そうした経験的学習の機会をフル活用しているのではないでしょうか。
一方で日本は島国であることも相まって、他国の人たちとの交流はそれほど多くはありません。故に「外人」という内集団たる"日本人"ときっぱり区別された存在を指す言葉が生まれたのではないでしょうか。どの国から来たのかとか、どういう文化圏から来た人なのかということは問題ではなく、日本の外から来た異質な奴らはまとめて外の人というわけです。全く根拠のない邪推ではありますが、なんとなくそんなことを感じています。
さらにいえば、日本は幸か不幸かモノリンガルな国です。今や小学校から英語を勉強しているという話ですが、それがなんだというのでしょうか。英語で友達を作ったり、英語を使うことで新しい知見を得られる経験があればそれは外の世界への興味につながるかもしれません。しかし、文化や人的関係と切り離された単なる学習分野として言語を学んでも、それは大した経験や知識につながらないのではないかと思います。
日本ではやたら英語が持ち上げられていますが、英語は学問や仕事の世界で世界共通語のように用いられているというだけで、そういう実用性のために学ばされているものだと思ってしまうと面白みもありません。私は隣国の台湾や韓国で話されている言語すらまともに話せないのです。それが英語を話せるということで得意になっていてどうするのでしょうか。私にとって、英語は異文化理解や他者理解と切り離された言語です。言語の背景には文化や歴史、教養や思想が含まれています。それと併せて興味を持つからこそ学ぶ意味・意義もあると思うのですが、日本で英語を学んでいてもあまりそういう興味を刺激されませんでした。もちろん英語に救われたことも数多くありますので、悪しざまにいうのも恩知らずというものではあるのですが...。

しかし、ここにきて色々な国の人や文化と触れあわざるを得ない環境に置かれると、日本にいた際に諸外国に対して向けていた関心度の低さが改めて強調されてしまい、自分が恥ずかしくなるのです。英語に対する敵意は、英語に頼っていた自分に対する自己嫌悪でもあるのかもしれません。

よく分からない話になってしまいましたが、隣人宅でビールを飲まされながらあれこれ考えさせられてしまいました。

 

2016年12月7日(水):曇り 親子丼会

最近、和食会を開催することが週一回の定例行事のようになってきました。今日は親子丼会です。

親子丼は醤油さえあればドイツの食材でもできるので、デュッセルドルフなしでもできる和食シリーズです。ただ、今回は贅沢にめんつゆを使いました。

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▲ 最近ご飯もうまく炊けるようになってきました

和食会で仲の良い日本人を招いて愚痴を言い合う。週一の最高の息抜きです。こういうホームパーティ、帰国後もやりたいのですが自宅生にはかなわぬ夢ですね。こうやって人を招くことができるのも、なんとなくドイツの雰囲気に飲まれているからというような気もします。日本では人を誘うのもはばかられる...。

ちょうど隣人もパーティをやっていたようで、音楽が聞こえてきました。盛り上がってるなーと思っていたら隣人がこちらに訪ねてきて、「今ちょうど音楽演奏してるからおいでよ!」と猛烈に誘ってきました。「いや、こっちも今食事会やってるから...」と断ろうとしたところ「それはちょうどいい!皆まとめてきたらいいよ!」と全員しょっぴかれることになりました。

隣人はフォークギターを弾いており、その他にエレキギターや打楽器メンバーもそろっており、ちょっとしたバンドが形成されていました。道理で盛り上がっているはずです。

その後小一時間演奏会を開いてくれて、ビールなども飲みながら隣人宅パーティに吸収されてしまいました。これは日本では絶対にありえないことのような気がします。

 

そうそう、今週末はStuttgartに行く予定になっていたのでした。友人と約束していたのに、てっきり来週末だと思っていたため全く計画をしていませんでした。

Stuttgartには友人が住んでいるので、友人宅に泊めていただく予定です。
友人の説明は面倒なので訪れた際に書きます。

 

 

2016年12月6日(火):曇り Altermarkt

今日はWuppertalのAltermarktのクリスマスマーケットに行くことになっていました。

前回渡航時はどういうわけか、Wuppertal市内すらまともに観光していませんでした。今回は日本人の友人もできましたし、彼らのおかげで自分一人ではいかなかったであろうところにも連れて行ってもらうことができています。

Altermarktという地区は、住民登録などで訪れた場所です。かつての中心地だったということもあってそこそこにぎわっているのですが、クリスマスマーケットそのものは大したことがありませんでした。

その後、Schwebebahnに乗ってあちこち行ってみましたが特に見るべきものはありませんでした。最後に中央駅に帰ってきて、Mittelaltermarkt(中世風マーケット)に足を運んでみました。そこも大して大きくはないのですが、やや珍しいものがそろっています。初めてドイツでバウムクーヘンを見つけたので、それを食べながら帰りました。

 

 

2016年12月5日(月):曇り 最後の寝坊

今日はまた寝坊してしまいました。

昨日飲まされたのが残っていたみたいで、目が覚めたら二コマでした。
もう金輪際こういうことはやめよう。授業の前日は夜半の誘いは断るようにしなければ。
誘われるといつもホイホイついていってしまっていたので、ここは明確な意見表明をする練習と思って自分の体力相応の遊びにしか付き合わないことにします。

これ以上授業を休むとテストを受ける資格を失いかねませんので、本格的に危険です。

2016年12月4日(日):晴れ アーヘン

今日は、ポーランドの彼と日本の友人と三人でアーヘンに出かけました。アーヘンの大聖堂は歴史に興味があるならば見るべきだ、との彼からの勧めです。

アーヘンはセメスターチケットの有効範囲内なので無料で訪れることができます。
市内ではクリスマスマーケットも盛大に開かれており、賑やかでした。
ですが、到着後まずはAachener printenというこの地方の伝統菓子の店で一通り有名なものを食べて昼食としてしまいました。

続いて大聖堂へ向かったのですが、ここにはカール大帝の玉座があるのだそうです。拝観料の2ユーロを払って見に行ったのですが、玉座という割には非常に質素でした。

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▲ 横から見た図

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▲ 非常に冷たそうな椅子です

夕食はBrauhausで済ませ、Wuppertalへ帰ってきたのですが、ポーランドの彼が家に招いてくれました。日本酒やらウイスキーやらを蓄えており、あれこれ飲まされて参ってしまいました。

彼は今、本の翻訳のアルバイトをしているそうなのですが、一冊丸々翻訳しておよそ10万円程度の収入になるのだそうです。本の翻訳作業の相場を知らないのですが、彼曰くこれは非常に安い金額なのだそうです。その仕事は、ドイツの本をポーランド語に訳すという形のため、ポーランドから報酬を得る形になっているようでした。「ポーランドの経済状況はこんな状態だからドイツで働きたい」と言っていました。働くといっても彼は哲学専攻のドクター学生なので、教授になることを目指しているのだそうです。

「君もドイツでドクターに進んだらいいよ。興味にも合致しているんだし、奨学金などの応募もそんなに難しくない。絶対やってみた方がいい!ドイツ語がそこそこ話せるんだったらいける!」と激しくプッシュしてくれたので考えてしまいました。私は二年前と相も変わらず、将来に対するビジョンのない無軌道学生のままなのです。物事に対する自信もないままです。このあたりの精神性についてはほとんど成長していません。いつまで甘えたことを言っているんでしょうね全く。

酔っぱらってきたら彼がポーランドの音楽を紹介してくれました。心地よい音楽だったのでここで紹介しておきます。

 

www.youtube.com

▲ Marek Grechutaという人なのですが、ポーランドでは誰もが知っているとのことです。

彼曰く、ポーランド語はロシア語よりも音が柔らかくてかわいいのだそうです。

"シュ"とか"チャ"とかそういう音がロシア語をより柔らかくした印象を与えるというのが彼の主張なのですが、いかがでしょうか。僕はロシア語の響きも好きなのでどちらがいいとも言い難いところです。

確かに聞いていて耳に心地よい言語です。いくつか単語を教えてもらったのですが、もはや一つも思い出せません。挨拶くらいはできるようになりたいのですが、あと三回くらい教えてもらわないと記憶に定着しないような気がします。